さて、もう帰ろうか、とした17時49分、湖南市役所と同じ敷地内にある湖南中央消防署からサイレンが響いてきました。
職業がらすぐに耳を澄ますと、サイレンに続いてカンカンと聞こえます。
うわっ、建物火災ぢゃん!と思うが否や、立て続けに消防車両が出動していきます。
秘書係長が消防本部に確認の電話を入れている間にも消防本部から火災速報メールが届きました。
「湖南市三雲0000-00 〇〇宅付近において建物火災発生。/(管轄) 湖南市消防団第1分団 /2017年01月17日 17時49分」
同時に受話器を握りしめた秘書係長も『三雲で建物火災です』と叫びます。
そこで、2階に降りて危機管理局に駆け込みました。
そこでも職員は電話に張り付いています。
局の消防無線からは『延焼を防げ』などと消防車両間の会話が聞こえてきますので、本格的な建物火災かと身構えました。
受話器を置いた職員は現場確認のために出動していきました。
遠くからサイレンが近づいて来たので石部分署からの応援かなと窓から見ていると、消防無線でも石部分署の消防車両が現場と連絡を取っているのが聞こえてきました。
大体の状況が把握できたので、再び3階に上がり、秘書広報課に戻りました。
真っ暗な市長室に捜し物をしようと突入すると、奥の方で懐中電灯の光が見えました。
自分の部屋なので手探りでも動けますが、灯りを持つ秘書係長が先に入室していたので、そこに向いて『こら、何をしているか!』と声をかけました。
すると、懐中電灯から『確か無線があったかと・・・』と答えがあったので、『同じことを考えていたぞ!それはここだ!』と真っ暗な中から手探りで無線機をサルベージしてみせました。
とりあえず無線機を片手に市役所をあとにし、車に飛び乗りハンドルを握りました。
今は県道になった数ヶ月前までの国道だった道に出ると、数台前を赤ランプが走っていました。
途中で道を折れ、ジグザグに市道を走りながら、旧東海道、さらには細い路地をクネクネと進みました。
走りながら消防団の無線を傍受していると、『団員2名、どうしましょうか』、『とりあえず出動してください』、『現場の状況を送ってください』などと情報を盛んに交換しています。
それらを聞きながらハンドルを操り、概ねこの辺りが現場だろうというところに差し掛かると、勾配の大きい新興住宅団地の狭い道路の暗闇に人の姿がありました。
ドンピシャ!とさっそくハンドルを右に切り、住宅団地の路地に入ります。
すぐ先のT字路を通りかかりながら左を見ると、パトライトが赤く回転しています。
そこは除雪が十分にできず1台分の通路しかない路地で、消防団のポンプ自動車が止まって道を塞いでいました。
その路地を通過し、道路の左側に止まっている車両たちの前に抜けて坂を登り、車を左に寄せて停車させようとしました。
しかし、そこには除雪されていない白い路側帯が続いていたのです。
左輪がそこに突っ込むと、途端にアクセルを踏んでいるのに、タイヤは空を切って回転しました。
一瞬、顔の血の気が引きました。
こんな真っ暗な中で車が脱出できなくなる?寒い中で誰に助けを求めたらいいのか?どうしよう。
慌てて頭の中で考えをグルグル回してみると、ピンと気がつきました。
そこで、ギアをニュートラルに入れてみました。
案の定、車は坂道を下がっていき、うまく雪の路側帯から脱出できました。
車を降りて路地を上がっていくと、消防団員たちが集まっていました。
『ご苦労さん』と声をかけながら歩いていくと、先発した市役所の危機管理局員もすでに部署しています。
火元の家の玄関前には消防職員がたくさんおり、家人から事情を聞いていました。
こちらの姿を認めた消防隊長が駆け寄ってきました。
『状況は?』と聞くと『ストーブの火災でしたがすでに鎮火しています』とのことでした。
家の周りに放水のあとが見られないので、『どうやって?』と聞くと『初期消火でした』と言います。
どうやら家人が消し止めたようです。
家の向かいには地元区長や矢野進次市議会議員もいました。
『ボヤだったようです』と話しかけると、『そういえば・・・』と言いかけましたので、『夏にも近くでボヤがありましたね』と発言のあとを引き継ぎました。
大火でないことを確認しましたので、現場をあとにして車に向かいましたが、狭い路地にはパトカーが頭から突っ込んで停車していました。
現場に警察官の姿もありました。
「先ほどの湖南市三雲0000-00 〇〇宅付近の火災は18時13分に鎮火しました。/2017年01月17日 18時14分」
追って消防本部からの鎮火メールがスマフォに届きました。
このまちの安全は多くの人の手で成り立っています。
みなさん、空気が乾燥していますので、火の元にはくれぐれもお気をつけください。
