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外国籍市民政策の現場から2011(2)

【教育現場の崩壊】 先に述べたように市内では外国人と日本人のトラブルが相次いでいました。

ゴミ出しや不法駐車など生活上のトラブルだけでなく、学校現場は最悪の状態でした。

それ以前から、甲西町=湖南市の教育現場は崩壊していました。

私の前任の町長が人気取りで教育長に大学教員を持ってきたのですが、その結果、県教育委員会で行う教員人事がサッパリわからなくなったのです。

甲西町は働き口が多く、地元出身の教員が少なかっただけに、他地域出身で他地域勤務希望の優秀な教員をどれだけ確保できるかが大事であったところ、大学教員上がりの教育長は何もわかっていなかったために、県教育委員会からは他市町村教育委員会から追い出された指導力に疑問符がつく教員をたくさん詰め込まれる結果となりました。

現場は混乱し、学級崩壊や不良行為、不登校が頻発したのです。

町長が私に代わり、その後、教育長も差し替えて、二人で県教育委員会に出向きました。

そして、職員一人ずつに『甲西町の教育現場は崩壊している。

人事上で十分な配慮を』とお願いして廻りました。

首長が県教育委員会の職員一人ひとりにお願いするなんて聞いたことがないと言われましたが、それほどひどい状況だったことは確かです。

【外国籍児童増加による課題】 そして、そうした混乱した教育現場に外国籍児童が大量に入ってくることになったのです。

外国人は、入管を経て本市に到着すると、市役所で外国人登録事務をします。

それが終わると、共働きの親はそのまま仕事に出てしまいます。

出稼ぎですので1時間でも余計に働きたいからです。

残された子どもは学校に運ばれて教室に投入されます。

まるで一時預かり保育か学童保育並みに学校が利用されていました。

とりあえず子どもたちは教室に入れられますが、授業は日本語ですから、何をしているのかチンプンカンプンです。

子どものことなので、そんなに長くじっとしていられません。

我慢しきれず、教室を飛び出して遊びにいきます。

先生はその子どもをつかまえに走ります。

そのあとを軽度発達障がいの子どもが続いて教室を飛び出し、見事学級崩壊の出来上がり!ということになりました。

これを説明しても実感がわかないかもしれませんが、当時ある校長は「私の仕事は、毎日各教室を回って、一日中子どもが席から立たないように肩を押さえて歩くことだった」

と言っていました。

また、親との関係も問題を抱えていました。

子どもは日本語を早く覚えますが、親はブラジル人の間で仕事をしているので日本語を覚える必要が少なく、結果として親子のコミュニケーションギャップを生じることになりました。

さらには、運動会では、親が朝6時頃に場所とりのためにグラウンドに行ってブルーシートを敷いて、一度自宅に荷物を取りに戻るということは日本人にとって普通の光景ですが、8時過ぎに学校へ戻ってみると、ブルーシートの上に土足で椅子を持ち込んで座った外国人が談笑しているということがあり、殴りあい寸前にまでなりました。

また、外国人の親が運動会に参加することも少なかったのです。

【日本語の初期指導を】 こうした教育現場の課題を解決するために、まずは人材派遣会社に協力を求めました。

子どもが不安定では親が安心して働けないだろうということで、朝と夕方はバスでの送り迎えがあるものの、日中は手の空いている人材派遣会社の通訳を学校に送りこんでもらいました。

子どもたちも、言葉の不安がなくなっただけでなく、市が雇った通訳より言うことを聞くようになりました。

このことを不思議に思うと、派遣会社の通訳は親の上司なので、言うことを聞かないと親が会社で不利になることを子どもたちは敏感に感じ取っていたのでした。

また、平成19(2007)年9月に『日本語初期指導教室『さくら教室』』を設置しました。

日本語がわからない子どもをいきなり普通教室に入れるから混乱するので、入国からまずは3ヶ月間、学籍は学校に置いたまま、日本語と日本文化を教える指導教室を設けたのです。

指導者には元教員(実は私の小学校時代の恩師)をあて、給食は教室近くの小学校で一般児童と食べて、徐々に慣らしていきました。

この事業は湖南市国際協会に委託しています。

さらに学校行事については、派遣会社が事前説明会を開き、例えば日本の運動会とはこういうものだというようなオリエンテーションをしたところ、今では綱引きやスプーンレースのような競技にも参加するようになりました。

子どもによるポルトガル語の場内アナウンスも理解を促進しています。

【外国人集住都市会議】 湖南市では、平成18(2006)年度、急増する外国人問題について共通の課題を持った自治体が集まる『外国人集住都市会議』に加入しました。

それまで、群馬、静岡、愛知、岐阜、三重の自治体で構成された会議に、関西で初めて加入したのです。

この会議は平成13年度に設立され、外国人住民に関する施策や活動状況の情報交換を行ったり、国・県・関係機関への提言などを行っています。

それと平行して、平成18年6月、市役所内に多文化共生社会推進本部を設置、全庁で取り組む体制を作りました。

さらには、急増する外国の隣人や異文化の理解・交流で魅力あるまちづくりを目指す市民活動の拠点として、平成19(2007)年6月には湖南市国際協会を立ち上げました。

前述の日本語初期指導教室『さくら教室』は、国際協会ができてすぐに運営委託したことになりますが、うまく運営してくれています。

平成20(2008)年9月から1年間、『外国人市民会議』を設置して、直接外国籍市民の口からニーズ把握もしました。

あわせて、外国人市民へのアンケート調査も行いました。

(つづく)

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