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「第1回全国介護福祉総合フェスティバル」で行った基調講演の粗原稿

平成28年7月2日に大阪市のシティプラザ大阪で開かれた『第1回全国介護福祉総合フェスティバル』で行った基調講演の粗原稿です。

ノートにまとめましたが、ノートのシェアはフィードに流れにくいようですので、改めてベタ打ちしておきます。

当日はこのまま読み上げていませんが、内容はこんな感じでした。

ご笑覧ください。

《障がい者・高齢者の社会参加を軸とした地域づくり》 ご紹介いただきました滋賀県湖南市長の谷畑です。

本日は、記念すべき『第1回全国介護福祉総合フェスティバルin大阪』にお招きいただきありがとうございます。

しかも、基調講演という重責をお預かりいたしました。

主催者のみなさんのご期待にどこまで応じることができるかどうかはわかりませんが、本市における取り組みをご紹介させていただき、ご参考になればと考えております。

事務局からいただきましたテーマは『障がい者・高齢者の社会参加を軸とした地域づくり』ということです。

本市におきましては、障がいのあるなしに関わらずさりげなく支え合えるインクルーシブな地域づくりを進めておりますが、このことがシームレスに高齢者福祉の世界にも応用できるのではないかという観点からのオファーではなかったかと理解をさせていただきまして、行政システムのお話しではなく、現場を中心に民間サイドの活動について、いただいたテーマに従ってお話をさせていただきます。

【滋賀県湖南市】 まず、湖南市ですが、滋賀県の南東部に位置する人口5万5千人のまちで、平成の大合併で誕生しております。

市内には国道1号や旧東海道、名神高速などが走っている東西交通の要衝であり、本堂がすべて国宝の3ヶ寺・湖南三山の名刹をはじめ、古くは伊勢参宮街道、東海道では五十三次の五十一番目の石部宿がございまして、近年では大規模な内陸型工業団地である湖南工業団地を造成しております。

京阪神のベッドタウンでもあり、昭和40年以降、人口はほぼ3倍となりました。

すなわち、お分かりいただけると思いますが、これから急速に高齢化が進む地域でもあります。

現在、高齢化率は22.5%ですが、2025年には28%、2040年には34.4%に達すると予測しております。

一昨日の新聞によれば、日本の高齢者人口はすでに4人に1人以上に到達したとされていますが、早晩、湖南市は日本全国のスピードを超えて追いつき、追い越すことになります。

【社会福祉の父・糸賀一雄の系譜】 一方、先の大戦後、浮浪児と呼ばれた戦災孤児や知的障がい児童が社会から疎外されていることに責任を感じた糸賀一雄という人がおります。

そうした子どもたちを対象に糸賀が昭和21年に滋賀県大津市地先で児童入所施設『近江学園』を創設しました。

糸賀は、わが国社会福祉の父と呼ばれる社会福祉の実践家ですが、もっとも有名な言葉として『この子らを世の光に』というフレーズを遺しております。

糸賀は、社会福祉は社会の福祉の総量ではなく、個人の福祉が保障される姿だと見抜きました。

そして、この子らに世の光をあててやろうというあわれみの政策ではなく、この子らが生きていることそれ自体が社会を照らす光となっているのだから、私たちはこの子らがさらに輝いて光を発するように磨きをかけなければならない、この子らを育てさせてもらっているという現実が大切だと話しております。

『不断の研究』、『耐乏生活』、『四六時中勤務』という糸賀イズムを施設の職員には徹底していました。

その近江学園が、現在では湖南市に移転されておりまして、その周辺に障がい福祉施設がコロニーのように集積しております。

そのため、湖南市では、普段から知的障がいのある人が街中で生活していますので、他市からこられた障がいのある方やそのご家族が、刺すような視線を感じないとおっしゃっていただいています。

しかし、糸賀の教えもそれを継承する人たちにより少しずつ変化して進化していきます。

一つの流れとして、入所施設ということは施設のルールがあり、当事者はそのルールに縛られて生活せざるを得ず、結局は当事者のためにならないと感じた後継者たちは、比較的軽い障がいの当事者が地域で生業を持って自立して生活できるようにと、24時間365日サポートするレスパイトサービスというものを始めました。

それがさらに進んで、措置費という憐みの政策ではなく、当事者が自立するために必要なサービスを受ける権利を確立するということで、自立支援費の制度を導入するように働きかけていきました。

ここからは、障がいのある人の限りない能力を活かしていくということから、それまで訓練の一環でつくられては捨てられていた絵画や造形に芸術性、付加価値を見出し、アールブリュット(生の芸術)という取り組みに昇華させていきました。

湖南市にある事業所や滋賀県社会福祉事業団などがそうしたアートを見つけ出し、スイスの美術館と連携して広めていき、パリの国立美術館で大統領や首相が鑑賞に来るまでになりましたが、そこに出展した作品のなかで一番多かったのが湖南市の作家の作品でした。

他方の流れとしては、比較的重い障がいの人たちが地域で暮らすためには、障がい者と健常者が共に生きるという姿をつくり出します。

そこからは、障がいのあるなしに限らず共に働き、生きがいを感じることが大切だという考え方につながっていきます。

そうしますと、後で紹介いたしますが、健常者と障害者がペアを組んで普通の仕事を受注していくという取り組みに発展していきました。

こういう取り組みは、平気で市役所の入札にも参加して落札して行ったりします。

さらに、ともに暮らすというところを、高齢者と知的障がい者を組み合わせる、すなわち、これまでの人生経験と知恵の豊富な高齢者と、体力がありヘルパー資格を取った知的障がい者を同じ施設で暮らすことで、お互いのかけた力を補い合うということができるようになりました。

こうした取り組みは小学生の国語の教科書に『こわれた千の楽器』として紹介されています。

弦が1本切れたバイオリンや片側の皮が破れた太鼓、音の出ない鍵盤のあるピアノなど、倉庫で眠っていた壊れた楽器たちが、もういちど音楽を演奏したいと、それぞれの欠けた音を別の楽器が補うことで見事なオーケストラになるというお話しですが、実はこれを書いたのは糸賀一雄の娘婿である野呂さかんという詩人でして、湖南市の教育委員長です。

【発達支援システム】 さらに、湖南市で特筆すべき取り組みは発達支援システムです。

LDやADHDなどの発達障がいについては、その発現率が近年高まっていますが、早期に発見して対応すれば大人になって重くならない場合が多いとされております。

湖南市では平成14年度から発達支援システムを構築して取り組んでまいりました。

これは、保健・医療・福祉・教育・就労・地域生活支援が切れ目なく相互で連携して子どもの発達段階に応じた適切な支援を行うものでして、湖南市の取り組みをトレースした形で平成16年には発達障害者支援法がつくられています。

ただ、このシステムの難しいところは、子どもたちひとり一人を見守る際に、保健・医療・福祉・義務教育までは市役所のなかだけで完結しますが、就労と地域生活となりますと、企業や地域社会との連携ということが不可欠となります。

そこで、湖南市では障がいのある人が地域でいきいきと生活できるための自立支援に関する湖南市条例という条例を制定いたしまして、市内の企業や地域社会にも責務を負わせています。

湖南市では企業も率先して障がい者雇用、就労支援に伴走いただいています。

この条例では、市民に対して助け合いの精神に基づいて『積極的又はさりげなく応援する』努力義務を課しております。

『さりげない支援』という言葉に反発する議会の筋もありましたが、今ではすっかり定着しております。

必死になって支えるということも大切ですが、それだけでは持続可能性がないため、地域の構成員ができることから手を差し伸べて全体として当事者の自立を支えられるセーフティネットを構築するという考え方です。

また、障がい者団体からの申し出により、『障がい者並びに障がい者の家族及び保護者は、社会の一員として自立に努めるものとする』という条項も入っておりまして、まさに支援する側とされる側が同じ方向を向いて、手をつなぎながら地域社会をつくっていくという理念が定められております。

湖南市での取り組みは、障害者権利条約にいう合理的配慮を確実に積み上げるということにつながっています。

一昨年、糸賀一雄の生誕100年を記念して県内で各種事業が展開されましたが、本市では糸賀を顕彰するのではなく、糸賀の思想が現在にどのように定着し、未来にどのように伝えるべきかを中心に取り組みましたので、市内の各事業所は入所、通所の別なく、障がいの種別の別なく、幅広く連携協力ができる体制を築くことにつながりました。

【自立を支援する地域活動】 こうした姿勢は、高齢者の自立や介護予防を支援する地域活動としても活きてきており、いくつかの取り組みを例示してみます。

まずは、『安心応援ハウス支援事業』があります。

これは、集会所や公民館など身近な施設を利用して、地域の高齢者のつどいを行い、ふれあいを通じての生きがい活動を展開する自治会に対して事業費を補助しています。

現在、市内の20カ所で『安心応援ハウス』が開設されています。

たとえば、北山台自治会という新興住宅では、『なごやかサロン』と称して、フラワーアレンジメント制作や夏野菜の園芸教室、認知症や介護予防についての出前講座、体操講座、筋力測定、まつりやゲームなど健康や文化講座などを毎月開いて50名前後の高齢者が参加しており、心身の健康維持や生きがいづくり、孤立化防止の仲間作りなどを行っています。

そして、そうした高齢者が自治会行事でコーヒーやケーキを販売したり、手話コーラスやハンドベルへの出演やスタッフとして参加したりしています。

安心応援ハウスを支えるスタッフも、認知症講演会や勉強会などに参加することで研修を重ねています。

次に、『いきいき百歳体操』の取り組みがあります。

高齢者が自宅から歩いて行ける身近な場所に集まって、DVDやビデオを見ながらゆっくりした動きで体操を行う自主的な取り組みですが、現在市内46カ所で800人以上が参加しています。

もともとは高知市から始まった取り組みですが、湖南市では平成21年度から始めました。

両手首や両足首におもりをつけて体操しますが、一人ひとりの体力や体調に応じておもりの重さを調整しながら、筋力を付けていきます。

体操が終わるとおしゃべりタイムとなり、ゲームや脳トレーニングなどをしています。

結果としてつまづきにくくなったり、椅子からの立ち上がりが楽になったりしています。

ここからさらに進化して、いまでは百歳体操と子育てサロンがコラボをするようになり、地域挙げての取り組みとなってきています。

体の健康づくりには、ほかに口腔の健康や食事バランスなどを学ぶ『元気はつらつ教室』や、運動したいけれども膝や腰が痛いという人に『水中ウォーキング教室』を市営の温泉プールで開いたりしています。

一方、認知症予防として、『スリーA教室』を開催している地域があります。

スリーAとは、あかるく、あたまを使って、あきらめないの頭文字ですが、リーダーとともに笑いと楽しみのコミュニティを育てています。

毎月開催しており、頭を使うゲームで楽しんだ後は、お茶とお菓子でおしゃべりをしています。

さらに、昨年度からは『健康麻将』という取り組みも始まりました。

健康麻将は『お金を賭けない、タバコを吸わない、お酒を飲まない』安心してできる麻雀で、公共施設で地域と一体となって高齢者の認知症予防、健康維持、仲間作り、生きがいづくりをしています。

地域の人がNPO法人健康麻将全国会の認定講師の資格をとってきて、そこに市が後援をするかたちで広がっており、その輪が広がってきています。

こうした活動を通じて人とのつながりを実感して仲間づくりをしてもらっています。

健康は一人の力で保ち続けるのは非常に困難です。

近所の声掛けやサポートを得ながら、地域全体で見守り、顔が見え、心がつながる地域づくりが大切になります。

【社会の居場所づくり】 これまでお話ししたような健康づくりや介護予防の取り組みはそれだけで居場所づくりとなってはいますが、役割が与えられると少し様相が変わってきます。

昨年度から、ある地域では『ちょこっとカフェ』という取り組みが始まりました。

これは、まちづくり協議会という、自治会の範囲では支えきれない福祉や教育、環境などの問題に取り組むために設立された小学校区単位の組織が主体となり実施しているコミュニティカフェです。

コミュニティカフェは、地域社会のなかでのたまり場、居場所であり、市民の出会いと交流の場、情報発信拠点としても注目されています。

ここでは、健康寿命を延ばすことと、地域と高齢者の架け橋となることを目的にしています。

週1回、食事とデザートを提供することで、高齢者に出かけるきっかけをつくり、デザートをつけることで滞在時間を伸ばし、食事品目を増やして健康管理をし、気軽な外食で気分転換につなげようとしています。

舌の筋力の衰えが全身の筋力の衰えにつながるということで、咀嚼回数と他人との会話で老化予防を目指しています。

外出でおしゃれをすることが脳のアンチエイジングにつながるとして、地元商店街や地元農家、そして地域おこし協力隊と連携して取り組んでいます。

いまではすっかり定着しただけでなく、そこに宿題を持ってやってくる子どもたちも増え、高齢者は地域での世代間交流という新たな役割を手にすることとなりました。

同じようなコミュニティカフェは、空き民家を借りて旧東海道沿いで開設されたり、まちなかの社会福祉法人が運営するデイサービスセンターなどでも開かれています。

また、滋賀県社会福祉協議会が開設するレイカディア大学という取り組みがあります。

琵琶湖の湖レイクと理想郷のアルカディアを組み合わせた造語ですが、高齢者の社会参加意欲の高まりに応え、新しい知識、教養と技術を身につけ、地域の担い手として登場できるよう、園芸や陶芸などの技術習得と仲間づくりをしています。

この卒業生のうち、湖南市在住の高齢者のみなさんが『レイ大OB会』というものを組織し、毎年レイ大交流フェスティバルという地域に開かれたおまつりをしたり、園芸技術を活用して市民公園や小中高校の樹木の剪定ボランティアなどをしていただいています。

今も会場入りが遅くなったのですが、湖南市レイ大フェスティバルという日ごろの活動の成果を発表する場で激励のごあいさつをしてまいりました。

その場で昔遊びのなかで竹トンボがありましたので、これからいくつか飛ばします。

プレゼントいたしますのでお受け取りください。

さらに、台所に立つことに慣れていない男性が料理に慣れ親しむと同時に仲間づくりの場となるように、男性の料理教室を1年間かけて毎月開催しています。

教室終了後もOB会活動や地域の役員活動にもつながっておりまして、この写真は障がい児のホリデースクールに出張して腕前を披露しているところです。

今年度はいわゆる『子ども食堂』を、大人が子どもに食事を提供するのではなく、男の料理教室OBが中学生に料理を教えて、それを中学生が小学生に提供するという試みにつながってきています。

ちなみに、湖南市では『地域で子どもをお客さんにしない』を合言葉に、子どもにも地域の役割を与えています。

【認知症を支える】 さて、湖南市では、2025年には65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症になると推測されています。

50000人のうちの3000人がそれに当たります。

そこで、認知症があっても安心していきいきと暮らせるような地域社会を創っていく必要があります。

そこで、地域で身近に集えたり相談したりできる場所として認知症対応型通所介護事業所5カ所に認知症地域支援推進員を配置して、認知症カフェの運営や相談を行っています。

また、認知症キャラバンメイトを派遣して各自治会や各種団体で認知症サポーターの養成講座を開き、地域で認知症の人を支える人を増やして行っています。

社会福祉法人ちいろば会は、まったくの新興団地のなかに通所施設を2か所設けています。

ひとつは市の北西部の閑静な別荘地であった新興団地にある『デイケアの家おしどり』ですが、ここでは『ふれあい楽舎』という場を設けました。

だれもが自分のできる働き・希望・夢を持って、楽に、楽しく人と人とのつながりを創れる家になればいいなという意味を込めておりまして、1月には1週間にわたり、ティータイムやバイオリンとともに合唱をしたりお好み焼きを焼いて食べたりと、地域のみなさんと交流するオープンハウスを行いました。

また、毎週ミニコンサートを行い、地域のみなさんに支えてもらっています。

一方で、こちらは市役所近所の新興団地の空き家を利用して、認知症専用の通所施設『しんあい』を開設しました。

認知症専用となると当初は新興団地の中でいろいろなご意見もありましたが、誰もが辿る道であるということをご理解いただき、今では地域と共に暮らしています。

また、ここでは若年認知症の交流会も行われています。

さらに、NPO法人ふれあいセンターそよ風では、大空というグループホームを立ち上げていますが、ここでは認知症カフェとともに子ども・子育て支援事業のひとつであるつどいの広場を併設し、子どもたちとコラボした取り組みをしています。

それとは別に、認知症の高齢者が行方不明になるという事案は、過去からもありましたが、認知症高齢者が増加するにつれて、そのケースが増えてきました。

その度にご家族や施設、警察、消防団などが捜索をするわけですが、どうしても発見するまでに時間がかかってしまいますし、その労力も膨大なものとなります。

そこで、今年の1月から『湖南市おかえりネットワーク』というシステムを運用し始めました。

これは、まず認知症高齢者のご家族や介護者があらかじめ当該高齢者の情報を市に登録していただきます。

その一方で、市民や事業者の間であらかじめ広く協力者を募っておきます。

そして、もし、高齢者が行方不明となって警察に行方不明届が出されたときにはすぐに市と連絡が届くようにあらかじめ連携をしておきますし、また、直接、市に捜索依頼の連絡が来る場合もありますが、そうした情報が入ったときには、市から協力者や協力機関に対して、一斉に行方不明者の特徴や情報について、メールで携帯電話に配信することとしています。

メールを受け取った協力者などは、普段の通勤、散歩、買いものなどの外出時に気がついたことを市役所に情報提供してもらい、面的に捜索範囲を広げることで、早期発見、保護をめざすことになります。

これも積極的な捜索活動ということではなく、さりげなく普段の生活の中での捜索協力ということになります。

しかし、それでも行方不明高齢者の捜索が困難であったため、先日の6月市議会で介護保険特別会計の補正予算を認めていただくとともに、国土交通省のスマートウェルネス住宅等推進モデル事業を活用して、ICTシステムを活用した見守りネットワークを構築し始めました。

地域においては、行方不明認知症高齢者の捜索訓練までしてくれているところもあります。

【障がい者福祉と高齢福祉の融合】 本来であれば、支えられる側の高齢者や障がい者が、共に力を合わせながら暮らすことをサポートしているのが、NPO法人ワイワイあぼしクラブの運営するグループホーム『南花(さざんか)』です。

もともと近江学園を卒園して地域で暮らし、働きたいという障がいのある若者たちのグループホームとして出発しましたが、高齢化に対応して入居者の満足度を高めるために、入居者を利用者ではなく住人として個人の快適性を保障した高規格で質の高いグループホームにつくり変えたものです。

特別な場所で特別な支援を行うのではなく、普通の暮らしを支える安全なホームとなっています。

また、『あったかほーむ いしべ宿』というホームでは、旧公営住宅を改修して、高齢者や障がい者、子どもが世代を超えて交流する空間として整備され、保育士や介護ボランティアを配置して、乳幼児や学童の保育、託老などを行っています。

隣には高齢者グループホームわいわいも整備されています。

ここは指定認知症対応型共同生活介護事業所のひとつであり、認知症であってもまちなかでその人らしい暮らしのできるグループホームとなっています。

また、地域の避難訓練時には、家族や地域の方と当事者が参加をしたりしています。

株式会社なんてん共働サービスが運営する小規模多機能型居宅介護事業所である『秋桜舎』では、普通の暮らしをいつまでも続けてもらえるように支援を行っていますが、そのためには普通の暮らしの感覚に合わせた認知症や障がいに関する専門的サポートが必要となります。

それを『秋桜舎』では『さりげなく、いざとなったら、とっておき』の専門性と称し、普通の暮らしを支援しておりますし、在宅看取りセミナーも開いています。

湖南工業団地のなかにある認知症対応型デイサービスセンターらくでは、障がい者福祉サービス事業所、就労継続支援B型のバンバンとコラボしたりもしています。

ここは社会福祉法人グローが経営していますが、グローというよりはオープンスペースれがーとと言った方が関係者にはなじみがあるのではないかと思います。

認知症高齢者と知的障がいのある人が普通に交流をしていますし、実は同じ敷地内に障がい者の働くダイニングや高齢者支援センター、子育て支援の広場なども併設されておりまして、新興団地の若いお母さんたちもカフェ感覚で出入りしています。

さらには、障がいがある人もない人も、お年寄りも子どもも、だれもが同じ人間として認め合って生きるまちづくりをみんなで進めようとして、平成元年から障がい児の入所施設である近江学園を会場に、地域のみなさんにより、毎年『ふれあい広場』が開かれています。

昨年度は、近江学園児童生徒の作品展示を始めたり、地域の小中学生や老人クラブに加えて県立石部高校の生徒ボランティアが運営スタッフに加わり、世代を超えたふれあいの場をつくっています。

【支える人を支える発想】 ところで、こうした介護や福祉を支える人材をどのように支えるかということは、政府が介護報酬で考えるより、人を扱うだけに極めてセンシティブな問題であるといえます。

そうした高齢者を支える現場が魅力的であれば、自然と支える人たちは集まってきてくれることになります。

そこで、『地域で生活する高齢者を支える仲間のつどい』を開催し、市長や健康福祉部局も参加し、警察の協力を得て特殊詐欺の講座を開いたり、グループワーキングでお互いの情報を交換し、課題解決につなげたりしています。

市役所の職員たちも楽しんで支えています。

また、市内に滋賀県立石部高校がありますが、県教委にかけあって、普通科のなかに平成25年度から『健康・福祉コース』を設けてもらいました。

高校卒業程度で介護現場を支えてもらえる人材を育てられないかという問題意識からで、湖南市内には糸賀一雄に源流をもつ全国的にも名前の通った人材や施設がたくさんあることから、そうした著名な人の話を聞いたり、施設での実習を通して、糸賀イズムをもった介護人材を養成しています。

さらに、これは大津市にあるライブハウスとのコラボになりますが、『介護っつええナイト!』という取り組みが行われています。

行政関係としては、私の他に元滋賀県知事や大津市長が参加していますが、介護現場も楽しいし、元気を出して行こうということで、私たちは行政の立場で現場のみなさんの生の声をいただきながら、制度について答えたり、検討するために持ち帰ったりしますし、若い介護職員のみなさんはギターやドラムを持ち込んで、日頃の介護現場とは異なった非日常のバンド活動発表の場を提供したりしています。

滋賀県内で放送されているびわ湖放送の『びわカン』という若手バラエティ番組の中で月1回介護を特集したり、『僕がジョンと呼ばれるまで』という映画の自主上映を県内で展開したりと、介護現場を元気づける取り組みも始まっています。

『マザーレイク』という映画が今、滋賀県内と福井県内で上映されていますが、ここにもさりげない姿があります。

この映画のエグゼクティブ・プロデューサーを務めさせていただいています。

【地域自然エネルギーの経済循環】 さて、お話しも佳境に入ってまいりました。

ここで少し毛色の変わった話題に切り替えることとします。

一昨日、未来学者のアルビン・トフラーさんが亡くなったというニュースがありました。

トフラーといえば『第三の波』です。

人間社会が第一の波である農業革命により狩猟採集社会から農耕社会に変わり、第二の波である産業革命により産業社会になったとします。

産業社会は、地球の有する化石資源を使って、大都市で画一化、個別分化された社会構成員を企業組織に再構築し、分業のなかで大量生産、大量消費をするという社会であり、その果実から人口の爆発的増加を招いてきました。

そこに第三の波が押し寄せることにより、産業社会での生産性向上と効率化の結果として、情報化や経済活動のサービス中心への移行による脱産業社会を迎えることになります。

特に、技術の進歩により、消費者が生産に携わることができる生産消費者が再び注目されるといわれています。

農耕時代には自家消費を中心として市場を介しない生産と消費が行われていました。

産業革命後の産業社会では画一化された社会の中で生産者と消費者が分離して、大量生産と大量消費が行われましたが、そこにおける消費者の役割は小さなものでした。

これが脱産業社会になると、社会の均一性が失われ、製品のカスタマイズ性が重視されたり、技術進歩で個人が生産に携われるようになることで、再び生産消費者の役割が大きくなってくるとされています。

工業化された産業社会は化石燃料や原子力利用という大量生産されるエネルギーで支えられてきましたが、現在では太陽光や太陽熱、風力、水力、バイオマスなど再生可能エネルギーの生産量が増えてきましたし、そうしたエネルギーの生産には、技術の進歩もあり、大都市の大資本だけではなく地方都市の小規模自治体や個人でも携わることができるようになりました。

【市民共同発電所・・・地域での役割の再認識】 湖南市においては、分権型社会を迎えるにあたり、エネルギーと経済の循環による地域の自立と活性化を図っておりまして、そのため平成24年9月に『湖南市地域自然エネルギー基本条例』を制定しました。

この条例は、地域に降り注いだ太陽エネルギーに起因する自然エネルギーを地域固有の資源と定義し、これを地域の主体が地域の持続的発展に活用するという理念を定めております。

大都市において一極集中的にエネルギーを消費して製品を生産することで経済を牽引するというヒエラルヒー型のモデルから、個々の地域がそれぞれ経済を循環させながら持続的発展をし、それがネットワークとして横断的に連携して国全体を支えていくという水平モデルにパラダイムシフトするということです。

例えば、具体的に言えば、湖南市で市域の外から購入しているエネルギーの対価は、年間153億円相当が市域外に流出しています。

これを地域内で生み出されたエネルギーに切り替え、エネルギー対価を域内で循環させることができれば、地域経済が活性化することになり、地域の自立につなげることが可能となります。

まさに自立分権に一歩近づくことになるのです。

実は、湖南市には平成9年に事業型としては我が国で初めての市民共同発電所が設置されました。

これは『てんとうむし1号』と言いますが、京都議定書を受けて、市民が地球温暖化防止に向けて立ちあがったもので、障がいのあるなしにかかわらず共に働こうという株式会社の屋根に置かれたものでございます。

この会社は『株式会社なんてん共働サービス』と言いまして、それまでは施設に閉じ込められがちであった知的障がいの当事者のみなさんが、地域で普通の暮らしができるようにと、健常者とともに普通に働くということを目指してきました。

この時点での市民共同発電所の設置は、わすか4.35キロワットでしたが、FIT(全量買い取り制度)もないなかでの、最先端のまさに無謀なチャレンジでありました。

しかし、ハンディを抱える人も節電や発電記録などで協力をしてきました。

その後、FITが導入されたのと東日本大震災に伴う原子力発電所事故を経て、市内では再び市民共同発電所の設置が機運として盛り上がってきました。

一般社団法人コナン市民共同発電所プロジェクトというものを立ち上げまして、市民からの出資を募り、売電益を地域商品券でお渡しし、地域経済の循環につなげるという取り組みを始めました。

初号機は福祉事業所の屋根、弐号機は市内企業の屋根、参号機は温泉施設の屋根、四号機は地域まちづくり拠点の屋根にそれぞれ設置されております。

そうした再生可能エネルギーの生みだす富を地域のまちづくりに循環させるインフラとして5月30日に地域新電力会社を立ち上げました。

こなんウルトラパワー株式会社と言いますが、地域事業者から出資を募り設立した会社で、地域内の再生可能エネルギー発電所からの電気に加え、関西電力の常時バックアップと電力卸市場から買い付けた電気を地域内の需要家に売電します。

そのことにより、電力の地産地消、地域内の資金循環、省エネ・節電、災害時のレジリエンス確保、そして安価な電力供給を行います。

将来的には、地域のエネルギーをマネジメントしながら、スマートコミュニティの構築を目指しています。

【ハンディを抱える人も参加できるイモ発電】 しかし、太陽光発電では発電量に不安定さがあることやハンディを抱える人の参加が極めて限られているということから、市民共同発電所のバイオマス発電への展開も必要ではないかと考えられました。

そこに先の条例で地域自然エネルギーについて市民への啓発学習支援が義務付けられていたことから開催をしていました市民連続講座の講師として鈴木近畿大学教授が来られました。

鈴木教授はサツマイモの空中栽培による大量生産に関心を寄せておりまして、イモを大量に生産してメタン発酵し、ガス発電をすることでエネルギー事情が好転するというお話をいただきました。

イモの空中栽培といいますのは、生物はストレスがかかると生命保全や子孫を残す本能が生じて、イモであればたくさんイモを付けるというもので、土の袋でイモを栽培することでストレスをかけ、それを棚の上に垂直に重ねることで、単位面積当たりの収穫量を飛躍的に増やそうとするものです。

こうしたイモの生産であれば、土づくりや植え付け、水やり、収穫、運搬といった人の手が必要とされるところで、障がいのある人や認知症を抱える人の力も借りることができます。

すなわち、そうした障がいのある人や認知症を抱えた人が参加することで、こうした人たちがサービスの受け手から発電の担い手になることができるというパラダイム転換が現実のものとなったわけです。

そこで、平成26年に『こなんイモ・夢づくり協議会』が設立され、昨年は『こなんイモ・夢つくり農園』を設定したのをはじめ、幼稚園や小学校、高齢者施設などでサツマイモの空中栽培が始まりました。

昨年度のサツマイモ空中栽培への参加施設は20施設で、900名が参加しています。

今年もイモの作付けが行われておりまして、メタン発酵の前提となりますイモの収穫量を増やす実証実験が進んでおります。

今年度は中学校や学童保育所、障害者施設や認知症高齢者施設、銀行など33施設に参加が拡大していますが、収穫されたイモを利用した小規模メタン発酵、小規模発電、給湯につなげて、そのお湯でいわば『空中栽培イモの湯』を目指したいねと関係者は話しています。

そして、空中イモのスイーツや空中イモの焼酎を製造販売したいと夢も広がっています。

【自覚者が責任者】 そろそろ結語の時間となりました。

湖南市においては、こうして障がいのあるなしや高齢であったり認知症であったりしても、住み慣れたまちなかでいつまでもその人らしく暮らすことができる環境が整備されています。

しかも、その場合のひとり一人には居場所だけではなくできる限り役割が用意されているといえます。

生きがいを持ちながらいつまでも元気に生きる。

そうしたまちを築き上げてきたのは、実はお話ししましたように行政ではなく地域の人たちでした。

糸賀の系譜を中心とし、自分がこれをしなければ誰もこれに取り組まないじゃないか。

それなら自分がやろうという自主独立の気風が湖南市の人々にはあります。

それを一言で表せば、『自覚者が責任者』ということです。

『誰かがやるだろうと思ったら大間違いに決まっているだろう。

気づいたやつがやらなかったら、誰もやるわけないじゃん。

やらなければいけないと気づいちまったお前さんが責任者なんだよ。

ちゃんと責任とれよ』ということであり、今の日本で何でも行政の責任に押し付けようという風潮とはまるで正反対の発想に包まれています。

そうであればこそ、行政もそうした自覚者たちの活動をしっかりと支えよう、展開できるように工夫しようと考えるのではないかと思います。

近代、産業社会において、福祉行政は大きく膨らんできました。

保険や福祉、医療といった社会保障サービスは、例えば生活費がないとか仕事がないとかいう大勢の人たちを生活保護制度や失業保険制度と言った誰でも公平に支援を受けられるサービスとして制度化し、大勢の人を救ってきました。

困った人たちの種類ごとに、年金や介護保険、医療保険、障害者自立支援、子ども・子育て支援などの制度がつくられてきました。

しかし、最近では、市民全体を対象にした公平で画一的な制度だけでは救われないような人が増えてきました。

例えば、高齢の知的や精神の障がいのある人はどの制度で対応すればよいのか、それが発達障がいであったらどうするのか、自殺者を救えと言ったときに画一的な取り組みで防げるのか、ホームレスはホームがレスだからとホームを与えるだけでは何の問題の解決にもならない、子どもの虐待には、外国人には、貧困には。

全員に同じサービスを公平に提供するだけでは解決できない個人の生活上の問題だらけとなっており、しかも、そうした個々人がたくさんになって社会全体の力を削ぐまで大きな問題になっています。

そこで必要とされるのは、全員に同じサービスを提供するのではなく、困っている人それぞれに見合ったサービスで、相談に乗り、見守り、そして寄り添ったうえで満足のいく決定をしてもらう。

一人ひとりに対応してその人らしい人生を創るというサービスは、これまで行政の仕事の外にありましたが、ここ1、2年、国の方向性も変わり、自治体にそうした相談業務を付与してきました。

しかし、行政だけではそうしたすべての人を支えられるだけの資源はありません。

そこで必要となるのが、地域において様々な主体が包括的に一人ひとりを支えるという地域包括ケアの考え方です。

パターナリズムとして垂直的に自分だけ恩恵を受ければよいという発想から、それぞれのクラスターが自律的持続的に活動し、それがネットワークを組んで総体としてよい社会に変えていく。

そうした脱産業社会の最先端を行っているのが、湖南市の民間を中心とした自覚者が責任者であるという福祉であると指摘をさせていただき、まだまだすべてを語りつくしたとはいえませんが、障がい者・高齢者の社会参加を軸とした地域づくりとしては、一定の方向やヒントをお伝えできたかと思います。

本日の第1回全国介護福祉総合フェスティバルin大阪が、本日から3日間、おおぜいの仲間たちと連帯と共感を広め、日本全国に自覚者が増えていく、そうすることこそが日本が尊敬される国として再び国際社会で注目を浴びるための近道なのではないかという基本的考察を最後に述べさせていただき、フェスティバルの大成功と、皆様のご活躍をお祈りし、基調講演といたします。

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